「屋根の葺き替え(ふきかえ)」って、一体いくら
掛かるんだろう?
知り合いの業者に依頼した方がいいか、それとも大きな会社に頼んだ方がいいかと色々悩んでいませんか?
実は、葺き替えにかかる料金は“ピンキリ”というのが実情で、相場もあってないようなものです。
葺き替えが必要な時期はある程度、自分で判断することができますが、そのためには屋根に関する基礎知識が必要です。
そこで、今回は屋根葺き替えの基礎知識とそれにかかる費用の目安、そして葺き替え時期の見極め方の3つを説明させていただきます。ぜひ参考にしてください。
目次
目次
1. 葺き替え(ふきかえ)とは
屋根の「葺き替え(ふきかえ)」とは耳慣れない言葉ですが、古い屋根材をすべて撤去し、新しい屋根材に取り替えることです。主な葺き替えのパターンは下記の5つがあります。
1-1 屋根の葺き替えにもいろんなパターンがあります。
■ 日本瓦 → 日本瓦

古い日本瓦

新しい日本瓦
■ 日本瓦 → スレート

古い日本瓦

新しいスレート
■ スレート → スレート

古いスレート

新しいスレート
■ スレート → ガルバリウム

古いスレート

ガルバリウム鋼板
■ トタン → ガルバリウム

古いトタン屋根

ガルバリウム鋼板
1-2. どの葺き替えパターンがベストなのか?
この中で一番多かった葺き替え工事は、日本瓦 → スレートへの葺き替えでしたしかし、これから先はガルバリウム鋼板への葺き替え工事が増加してくると予想します。

ガルバリウム鋼板
ずばり、ガルバリウム鋼板への葺き替えがベストです!
1-3. ガルバリウム鋼板がベストな理由
ガルバリウム鋼板がベストな理由、それは飛躍的な防錆性の向上とその価格です。一昔前までのトタン屋根は、数年経つと出現するサビが最大の欠点でした。腐食がひどくなると穴が開くことも度々で、見た目も大変悪いものでした。一方、防錆性がより優れているステンレス屋根は非常に高価で、一般住宅の屋根材としては、現在でもほとんど普及していません。
そこで登場したのが、ガルバリウム鋼板です!サビは10年以上(※)出ることはなく、価格もステンレスに比べて格段に低価格です。また、震災の影響もあり、屋根材の軽量化が叫ばれるようになりましたので、そのような観点からもガルバリウム鋼板への葺き替え工事がベストの選択だと思われます。
※ こちらはメーカー保障が10年であり、施工保証ではありません。
1-4. 金属屋根は、どうしても抵抗がある方へ
金属屋根と聞くと、どうしても「錆びやすい」「格好悪い」「雨音が大きい」「夏に暑い」とのイメージが、あるのではないでしょうか。
「サビ」については、これまでの説明で、少しは軽減されたのでないかと思います。そして「格好悪い」は間違ったイメージだと断言します。

渋い光沢を放つガルバニウム鋼板
実は、プロの我々でさえ、屋根に上るまで、ガルバリウム鋼板だと気付かないことがあります。見た目は、スレートにそっくりです。しかも、最近のガルバリウム鋼板はバラエティーに溢れるデザインがあり「格好悪い」ことはまずありませんので、ご安心ください。
また、雨音の軽減や夏の暑さも新工法により、既に対策が行われています。私事で恐縮ですが、もしも自宅をリフォームするなら、次はガルバリウムでと考えているくらいです。

こんなにお洒落なガルバリウムの屋根もあります
ガルバリウム鋼板について、もっと詳しく知りたい方は「ガルバリウム鋼板屋根は何が凄いのか?その特徴を検証!」の記事をご覧下さい。
2. 屋根の葺き替え時期
一般的には、屋根の手入れを一切していない場合(そのような方がほとんどだと思います)、以下の年数経過で屋根を葺き替えるべきだといわれています。
2-1. 葺き替え時期の目安
屋根が下記写真のような状態でしたら、葺き替えを検討され始めることをおススメします。
■ スレート:10~15年

15年経過したスレート
■ 日本瓦:25~30年

30年経過した日本瓦
■ トタン屋根:6~10年

10年経過したトタン屋根
ただし、これらはあくまでも屋根業者が宣伝文句として吹聴している数値に過ぎません。
あたかも「屋根材の寿命だから仕方がないですよ」というスタンスで話しているようにして、実は屋根業者が自身の私腹を肥やすために、上記のような内容をチラシやホームページ等で告知して、工事を促しているのです。古典的な営業テクニックの常套手段です。
やはり、一番合理的に屋根の葺き替え時期を知るには、ご自身でチェックするのが一番です。とは言っても、いきなり「屋根に登って下さい」などとは言いません。もし、あなたが最も安いお値段で葺き替えをしたいとお考えなら、以下のチェックリストを参考にしてください。
2-2. 自分でもできる葺き替え時期チェックリスト
1. スレートに多数ひび割れがある(目視にて確認)

スレートのひび割れ
2. 屋根が白っぽく色あせている(チョーキング現象)

スレートの塗装が白くなる
3. 築15年以上全く手入れしていない

15年以上手入れなしの屋根
4. 天井に雨染みの跡がある

天井の雨染み
5. 雨が降ると翌日晴れなのに室内が湿気っぽい

室内のカビ
6. 屋根にコケやカビが生えて緑や黒っぽくなっている

スレートにコケがある
7. トタン屋根全体が赤っぽく錆びている

サビついたトタン屋根
8. あちこちで雨漏りしている。ポタポタと雨音がする

天井裏の雨染み
9. 風が吹くと屋根の上で異音がする

隙間に風が当たって異音がする
10. 瓦全体が不揃いである

瓦がズレている
5つ以上当てはまるようなら、半年以内に屋根の葺き替えをする必要があります。3~4つ該当なら、そのうち来る葺き替え工事のために準備をしたほうがよいでしょう。2つ以下であれば、該当箇所のみの修理で十分でしょう。
3. 葺き替え工事のメリット・デメリット
全部新しい屋根材になるというと、全てが良くなると思われますが、現実はそうではありません。ここからは、屋根の葺き替え工事のメリットとデメリットについてお話します。
3-1. 葺き替え工事のメリット
■ 寿命が延びる
基本的には、下地を含む屋根材をすべて新しいものに替えるわけですから、屋根が新築になるのと同じです。当然、屋根の寿命が延びます。
■ 地震に強くなる
最近のほとんどの屋根材は、昔に比べて性能がアップし、しかも軽量化されています。屋根が軽くなると、地震に強くなります。その理由は、住宅全体の重心が低くなり、振り子の原理で地震に対して揺れが小さくなるからです。
出典:http://www.yaneyasan13.net/category/1910676.html
信頼できる優良業者に屋根の葺き替えを依頼すれば、一時的な屋根修理とは比べものにならないぐらいの安心感が手に入ります。例えば、長期の雨漏り保障だったり、見た目の綺麗さだったり、メンテナンスも当分不要になります。
3-2. 葺き替え工事のデメリット
■ 出費が増える
屋根修理や塗装に比べて、屋根材を全て葺き替えるので、材料費、施工費共にかなり高額になります。また、既存の屋根材を処分しなければならず、工事期間も長くなるため、職人の人件費もその分増加します。出費が一番のデメリットだと言っても良いでしょう。
■ ご近所迷惑になる・・・
既存の屋根材を処分するとき、業者によっては屋根から階下のゴミ箱(コンテナ)に投げ込みこともあります。当然、破片がご近所まで飛んでしまうこともあります。電動ハシゴで屋根材を丁寧に降ろしたとしても、細かなホコリはどうしても舞ってしまいます。それらが原因でお隣とトラブルになることもあるようです。

処分する屋根材

産業廃棄物用のコンテナ
特に、ご近所の自動車に関しては、ビニールカバーを被せるのではなく、事情を話して、コインパーキング等へ移動していただいた方が良いです。私たちは、屋根の葺き替え時には、施工主さんと近所にあいさつに行くことがありますが、事情を説明すれば、大体分かっていただけます。
通常は、業者が駐車料金を負担しますが、自費の場合でも必ず、自動車を移動させることをお奨めいたします。数百円のことで、ご近所とトラブルになってしまったら精神的な出費がかさむことになります。

車にビニールカバーを掛ける

コインパーキング
4. 葺き替え費用の相場(目安)
屋根の葺き替え費用は、葺き替え工事によって異なり、また葺き替える屋根材の種類や屋根の広さ、形状によっても様々です。さらに、業者による価格の決め方も違うため、ピンキリとなっています。そのため、価格の相場もケースが多すぎて、ここでの表記は難しいと言えるでしょう。
しかし、それでは納得していただけないので、ここでは1000軒以上の屋根修理を行なった私の経験をもとに、葺き替えパターン別に費用の目安をお伝えします。
4-1. 葺き替え費用の目安
■ 日本瓦 → 日本瓦

古い日本瓦(ビフォー)

新しい日本瓦(アフター)
日本瓦 → 日本瓦 | 50,000円~90,000円 /坪 |
15,200円~27,300円 /㎡ | |
一般的な住宅の大きさでは、50万円~270万円 |
■ 日本瓦 → スレート

古い日本瓦(ビフォー)

新しいスレート(アフター)
日本瓦 → スレート | 40,000円~70,000円/坪 |
12,200円~21,300円/㎡ | |
一般的な住宅の大きさでは、40万円~210万円 |
■ 日本瓦 → ガルバリウム鋼板屋根

古い日本瓦(ビフォー)

ガルバリウム鋼板(アフター)
日本瓦 → ガルバリウム鋼板屋根 | 50,000円~80,000円/坪 |
15,200円~24,300円/㎡ | |
一般的な住宅の大きさでは、50万円~240万円 |
■ スレート → スレート

古いスレート(ビフォー)

新しいスレート(アフター)
スレート → スレート | 40,000円~60,000円/坪 |
12,200円~18,200円/㎡ | |
一般的な住宅の大きさでは、40万円~180万円 |
■ スレート → ガルバリウム鋼板屋根

古いスレート(ビフォー)

ガルバリウム鋼板(アフター)
スレート → ガルバリウム鋼板屋根 | 30,000円~60,000円/坪 |
9,100円~18,200円/㎡ | |
一般的な住宅の大きさでは、30万円~180万円 |
4-2. 葺き替え費用を1円でも安くする方法は?
基本的に、信頼のおける優良業者に屋根の葺き替え工事を依頼する事です。
なぜならば、この葺き替え工事だけは、一般人には不可能だからです。もし、あなたのお知りあいに葺き替え工事ができる人がいるなら、その方にお願いするのも良いでしょう。
しかし、お知り合いに屋根の葺き替え工事ができる方がいるなんて、稀なケースです。そこで、優良業者の見分け方をこれからお伝えしますので、興味のある方は参考にしてください。
5. 優良業者は、たった1つの問合せで判断できます
あなたが、ある業者に屋根の葺き替え工事を依頼しようと思ったら、その理由が経年劣化であったとしても、敢えて「先日の強風で屋根が壊れたのですが、安く修理していただけますか?」と問合せをしてください。
「まずは、屋根を見させていただかないと何とも言えませんね」や
「屋根は、どのような状態ですか?まずは見積りをさせてください」等・・・すぐに見積りを取りに行くような対応をされた業者は、優良業者とはいえません。(完全な悪徳業者だという意味ではありません、念のため・・・)
なぜなら、強風で屋根が壊れた場合は、火災保険の「風災補償」で。その修理費用はカバーできるからです。屋根業者なら、ほとんどが知っていることです。もっと詳しく火災保険のことを知りたい方は「必見!火災保険を使って屋根修理を無料で行う方法」記事をご覧ください。※この記事はお奨めです。
この問合せに対する、模範的な対応は、以下の通りです。
「それは大変でしたね。ところで、火災保険には加入されていますか?」(業者)
「ええ、○○海上火災に加入しています」(あなた)
「それなら、保険で修理できる可能性がありますので、修理費用の心配は無用ですよ」(業者)
このような対応が自然にできるという事は、常日頃からお客様の利益を第一に考えている証拠です。屋根を工事する技術はもちろんのこと、あらゆる状況を想定して、お客様に目を向けた仕事をしている業者こそが、本当の優良業者といえます。
もう一つ例を挙げますと、屋根の重ね葺き(カバー工法)時に、屋根裏の換気について説明する業者も信頼に値する企業です。一般業者は「このお客様は、財布の紐がキツい方だ」と判断した場合、お値段が張ってしまう屋根裏の換気については、あまり話をしようとしません。
なぜなら価格競争に負け、他社にお客様を取られてしまう事を避けたいからです。これでは、全くお客様のことを考えているとは言えません。
カバー工法(重ね葺き工法)とは?
私たちは、屋根の上に屋根を被せる「重ね葺き工事(カバー工法)」のときは、必ず屋根裏換気の必要性とその価格を伝えたうえで、お客様のご要望を伺っています。屋根裏換気とは、屋根の頂上部(大棟)と軒裏に換気口を取り付けて、温度差を利用して外部に湿気を逃す工事のことです。
また、古い屋根材をそのまま残しておく重ね葺き工事(カバー工法)は、健康被害の原因や地震耐性の悪化が考えられるため、事情を話してお断りすることもあります。

屋根の上に屋根を葺くカバー工法

大棟の換気口
6. 葺き替え工事期間とその工事内容
では、実際に屋根の葺き替え工事を依頼すると、どのくらいの期間がかかり、どのような作業を行うのか説明いたします。
6-1. 葺き替えパターン別の工事期間
※一般的な規模の住宅の場合
日本瓦 → 日本瓦 | 工事日数:約4日~6日(職人4人) |
日本瓦 → スレート | 工事日数:約2日~4日(職人4人) |
日本瓦 → ガルバリウム | 工事日数:約2日~4日(職人4人) |
スレート → スレート | 工事日数:約2日~3日(職人4人) |
スレート →ガルバリウム | 工事日数:約2日~4日(職人4人) |
6-2. 日本瓦 → スレートへの葺き替え工事内容
ここでは最も多い、日本瓦 → スレートへの葺き替え工事について説明します。
まずは、古い瓦を取り外し、下へ降ろします。1枚1枚手作業で瓦を剥がしていき、棟部の鬼瓦やのし瓦も降ろします。その降ろし方は大きく2通りあります。
大きな音を出しても施主様やご近所に迷惑にならないのであれば、軒先に大きなゴミ箱を置いて、そこに屋根から投げ込むというものです。結構、大きな音がしますしホコリも出るので、あまりお奨めしません。
もう1つが荷揚げハシゴ(電動式の荷台が付いたハシゴ)を利用して丁寧に降ろす方法です。確かに手間は掛かりますが、こちらが最も優良な方法だと考えます。

瓦を撤去中
次に、瓦が引っかかっていた桟木(瓦を留めるための木材)を取り外します。そして防水のために敷いてあったルーフィングも撤去します。下地である野地板を確認して、穴をコーキングで埋めて修理します。基本的にクギは抜かないほうがいいです。抜いてしまうと穴が開き、そこが雨漏りの原因となります。

桟木を撤去中
野地板の傷みや腐食がひどいようであれば、新しい野地板に葺き替えます。野地板がその下地となる垂木にしっかりと固定されているか確認してください。
野地板の上にアスファルトルーフィング(防水シート)を敷いていきます。その際、必ず雨水の経路を考えて軒先(屋根の一番低いところ)から棟(屋根頂上部)への順番で敷き始めます。

古いルーフィングです
それぞれのアスファルトルーフィングの重ね幅は、上下方向は100mm以上、左右方向は200mm以上、壁面に接する立上り部分は300mm以上、棟部分は200mm以上が必要です。アスファルトルーフィングは破れていないかも事前にチェックします。
アスファルトルーフィングを留めるには「タッカー」という大きなホッチキスで留めます。屋根の広さを考慮してスレートを敷いていく位置を決めます。この位置決めを誤ると水捌けが悪くなったり、後に余分な手間が掛かることがありますので、慎重に行います。

新しいルーフィングです
最後に、スレートを敷いていきます。もちろん敷き方は雨水の流れを考慮して軒先から棟へと順に敷きます。スレートにはクギ打ち用に穴が開いていますので、1枚1枚クギ打ちしていきます。
敷いたスレートに上にスレートを敷くときはそのクギ穴が隠れるように重ねて敷いていきます。また、奇数列目と偶数列目のスレートの繋ぎ目は必ず、互い違いになるようにします。これは雨水の経路を考慮してのことです。
特に、屋根棟部、軒先部、下屋部のスレートは、水はけのことを考えると、屋根の形や状況に応じた現場での加工が必要になります。

新しいスレートを設置中
最後に屋根棟部、軒先部、下屋部に水切り金具や棟板金などを取り付けて完了です。これらを取り付ける際も気を抜かず、常に雨水の流れを考えてクギやビスで固定します。

スレート屋根の葺き替え完了
屋根の勾配は、何度がいいのですか?
勾配とは、傾斜の度合いのことです。A点から水平距離10進んだ箇所で垂直方向に3の高さの箇所をB点とします。そのA点とB点を直線で結んだ傾斜を屋根勾配の場合は3/10というような表し方をします。この場合は3寸勾配と言います。
建築基準法では、次のような必要最低勾配の規定があります。
金属葺き ・・・・・・1/10以上(1寸勾配以上)
スレート葺き・・・・・・3/10以上(3寸勾配以上)
瓦葺き ・・・・・・4/10以上(4寸勾配以上)
一般的な屋根勾配は、4/10(4寸勾配)です。4/10(4寸勾配)は角度に直すと約21.8°になります。この角度にしておけば、ほとんどの屋根材に適していますので、葺き替え時でも勾配調整などの余計な費用が掛かりません。一番ベストな屋根の傾斜は、約21.8°ということになります
※日本瓦以外の瓦から、日本瓦への葺き替えは、必要最低勾配に達していないので、勾配調整工事が必要になります。ご注意ください。
7. まとめ
この記事で、屋根の葺き替え工事に関する基礎知識や費用の目安、葺き替えの適切な時期等について、ご理解いただけたと思います。
優良業者の見分け方なども参考にしていただき、納得できる葺き替え工事をしていただければと思います。
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