軒がもつ役割とは・・・
マイホームを建てられる際、意外と「軒」のことを考慮しない方が多いようです。そして、実際に住み始めて、軒が短いために様々なデメリットを感じている方が多いようです。
この記事では、普段あまり気にならない「軒」の持つ利点(アドバンテージ)についてお話しします。
プロの建築家の視点から、一般の方が気付きにくい大切なポイントについてご説明しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1. 軒とは
住宅の壁面より外側に張り出している屋根部分の総称を「軒」と呼びます。通常は、屋根の下端全体を意味します。最近では都心部で軒が短い、もしくは無い住宅が多く建てられているようですが、かつての日本住宅には全て「軒の出」がありました。また、一般的には以下の言葉も軒と同じ意味で使用されています。
1-1. 軒先
軒の先端部分です。雨樋が付けられている「軒先」とケラバになります。
1-2. 軒下
軒に覆われた下部空間を「軒下」と呼びます。
1-3. 軒天
外壁から外側にある、軒の出の下面を指します。火災時に焼えにくい材質で作られています。
2. 軒の三大機能
ここでは、軒があることによるアドバンテージ(機能)を3つ、お話しします。
2-1. 外壁の保護
軒があると、外壁より屋根が出張ります。外壁が太陽光や雨風の影響を受けにくくなり、外壁を保護することになります。
2-2. 日差しの調整
夏場、軒がないと窓ガラスや外壁に直射日光が当たることになり、室温が余計に上昇します。しかし、冬場は軒があっても日射角度が低いため、日差しを遮ることにはなりません。よって、室温が低下することはありません。
2-3. 雨除け
軒は窓の上にあります。そのため、雨天時などに雨除けの役目を果たし、窓からの雨水の吹き込みを防止する機能もあります。
3. 軒の必要性について
主な住宅構造には「木造」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」の3つがあります。どれも軒がある方が、住宅の耐久性を高めることになります。ここでは最も多い、木造住宅の軒の必要性についてお伝えします。
3-1. 軒は付けるべき
木造住宅においては、軒があるとないとでは、耐久性に雲泥の差が出ます。その理由は、木造住宅の主材料が木材だからです。ご存知の通り、木材は長時間、水に浸ると腐食し、脆くなります。また、乾燥 ⇔ 湿潤を繰り返すことでも傷みます。
気象環境によっては、軒の有無の違いで、住宅の耐久年数に倍以上の差が出るといわれます。木造住宅を検討中の場合は、必ず軒のある住宅にしましょう。
3-2. 軒が付けられない場合の対処方法
敷地に対して最大限に建築面積を得ようとすると、地域によっては、斜線制限や建ペイ率などで軒が付けられないこともあります。その場合の対処方法を2つお伝えします。
■ 外壁はタイル張り
外壁をタイル張りにすれば、外壁内への雨水浸込みは、ある程度防ぐことができ、住宅の耐久性低下をいくらかは軽減できます。だたし、タイルは白色以外にしましょう。なぜならば、水垢が目立つからです。
■ 窓に庇を付ける
短くても窓に庇があれば、雨の降り込みは軽減されます。また、外壁を伝っている雨水の入り込みも防ぐことができ、窓に施してある防水コーキングの劣化予防にもなります。
4. 軒の出は90センチが基準
最も機能的に優れている軒の長さは約90センチだといわれています。もちろん、それには明確な理由が2つあります。
4-1. 日射角度がちょうど良くなるから
軒の出を90センチにすると、窓上部と軒先端を結ぶ角度によって、夏至では室内に日光が差さず、冬至では直射日光が差し込むみます。この絶妙な角度をキープするには、軒の長さが約90センチであること。これがベストであるというわけです。
4-2. 雨降りの吹き込みを防止できるから
通常の雨天時では、軒の長さが90センチあれば、まず雨水が窓や外壁に当たることはありません。※さすがに台風時や暴風雨時には、この限りではありません。
しかし、デザイン性を考慮すると30~60センチの軒の出が一番現実的かもしれません。ここはデザインと機能性の両立のバランスが難しいところです。
5. 最近の軒が短い3つの理由
近年、軒が短いまたは無い住宅が多くなっている理由は「一戸あたりの敷地面積の狭さ」「縦長住宅が多い」「住宅価格の下落」の3つが理由だと言われています。
5-1. 一戸あたりの敷地面積の狭さ
都心部では「永遠の命題」となっているのが、敷地面積の問題です。敷地が狭いと、どうしても隣地境界の制限の関係で、軒が短いまたは無い状態になります。
5-2. 縦長住宅が多いから
その狭い敷地に広い建築面積を確保するには、ビルのように縦に長い住宅にするしかありません。縦長住宅に長めの軒があると、デザイン的に好ましくないという理屈です。
5-3. 住宅価格の下落
軒があるまたは長いと、単純に材料費や職人の手間賃が増えてしまい、住宅価格に上乗せされてしまいます。しかし、今の日本では、価格上昇は業者の命取りになりかねません。そのため、業者は積極的に軒の短いまたは無い住宅を提案してくる傾向にあるのです。
6. 長すぎる軒、その4つのデメリット
軒は、ある程度長いほうがいいと申しましたが、やはり限度があります。ここでは、軒が長すぎると起こりうる4つのデメリットについて、お話しします。
6-1. 耐風性が低くなる
軒下から外壁に風が当たると、軒天に向かって吹き上げることになります。その風の力は結構バカになりません。何年も受け続けると、軒自体が壊れやすくなる危険性があります。
6-2. デザイン的に似合わなくなる
たとえ縦長住宅でなくても、長すぎる軒は頭でっかちになり不安定に見え、デザイン的に良いとは言えません。
6-3. 居住面積が狭くなる
隣地境界制限により、外壁がより敷地中心部に押し込まれることとなり、居住スペースは狭くなってしまいます。
6-4. コストアップになる
軒が長くなるということは、それだけ材料費や人件費もアップすることになります。
7. 軒に破損を見つけたときの対処方法
すでに住宅を購入済みで、軒に破損などの壊れを発見したら、まずは加入している火災保険を確認しましょう。ほとんどの火災保険には「風災補償」が自動セットで付いています。
出典:http://www.sompo-japan.co.jp/kinsurance/habitation/sumai/sche/wind/
※平成26年7月1日に更新され 表示が異なっています。
このように、「強い風で軒が壊れたのかもしれない」と少しでも思われたのなら、火災保険で修理でる可能性が大きいです。なぜならば、私の経験上、軒が壊れる原因は十中八九、突風などによるものだからです。
では、どうすれば火災保険で軒を修理できるのか。それについては「必見!火災保険を使って、屋根修理を無料で行う方法」で詳しくお伝えしていますので、ぜひご覧下さい。
8. まとめ
軒の必要性や機能について、詳しく説明させていただきましたが、理解していただけたでしょうか?
軒が壊れたら、ほぼ100%風が原因だと考えて良いでしょう。それは火災保険で修理できるということです。つまり、「軒の修理 = 火災保険を使う」という公式が成立します。
この記事が、あなたの快適なマイホーム生活の参考になれば幸いです。
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