屋根の「勾配」って、何だろう・・・
屋根の「勾配」といきなり言われても、正直、何のことか分からないし、何を基準に決めれば良いかも分からないというのが本音だと思います。
しかし家造りにおいて、ハウスメーカーがオススメする屋根をそのまま鵜呑みにして良いのでしょうか?やはり、少しでも屋根勾配について知っておいた方が得策だと思います。
そこで、この記事では、恐らく一般人は誰も意識したことがないであろう「屋根勾配」の基礎知識と勾配の角度(度合い)によるメリット・デメリットについてお話しします。快適な住まい作りのために、ぜひ参考にしてください。
目次
1. 屋根勾配(やねこうばい)とは
屋根の傾斜の度合い(角度)のことです。その度合いは、屋根材の種類と形状や、地域の積雪量、降雨量などの気象条件を考慮して決められるのが一般的です。
2. 勾配の表示方法
屋根勾配の場合は「寸」で表示する方法と「角度」で表示する方法の2つがあります。一般的に多く見られるのは「寸」での表示方法です。
2-1.「寸」での表示方法
「寸」での表示は、水平距離10に対しての高さで表示する方法です。例えば高さが“4”であれば4 /10という表示になり、この場合は「4寸勾配」と言います。ちなみに10/10(10寸勾配)を矩勾配(かねこうばい)と言います。
2-2.「角度」での表示方法
「角度」による表示は、お馴染み、上記の表示方法です。説明の必要はないでしょう。
2-3. 「分数」による表示方法
水平距離と高さの比率を分数で表した「分数表示」もあります。上記の「寸」での表示方法と基本的に同じ考え方ですが、こちらは約分された数字で表されます。
3. 急勾配屋根のメリット・デメリット
6寸勾配(31°)以上の傾斜がある、傾斜が高い屋根を「急勾配」といいます。ここでは、そのメリット・デメリットについてお話しします。
3-1. メリット
■ 耐久性が高まる
急勾配だと、雨水がすぐに流れ落ちるので、雨水が滞留せず、屋根材のコケ発生や塗装剥がれなどを遅らせることができます。
■ 雨漏りの危険が低下
上記と同様に、雨水の滞留が少ないので、ルーフィングや野地板などの腐食による雨漏りの危険性はかなり低くなります。
■ デザイン性が高まる
特に敷地の狭い住宅では、屋根を急勾配にすることで、より重厚感のある豪華な住まいに見せることができます。
■ 屋根裏スペースが広くなる
急勾配だと、より天井から屋根裏面までのスペースを広く取ることが可能になりますので、物置などの室内空間を有効に使えます。また、広い屋根裏スペースには断熱効果もありますので、2Fが夏場にはより涼しく、冬場にはより暖かくなります。
3-2. デメリット
■ 耐風性が弱まる
急勾配だと、屋根面の角度が高いので、突風や台風時に、その影響を受けやすくなります。
■ 施工価格が高くなる
急勾配になればなるほど、屋根面積が広くなるので、当然施工価格も高価になります。また、急勾配で作業ができる職人も限られてきますので、その人件費も高くなりがちです。
ちなみに勾配の度合いによって、屋根面積がどの程度増えるのかを知りたい方は下記表をご覧ください。※表をクリックすると、大きな表に変わります。
■ 足場が必須になる
個人的には勾配の度合いに関わらず、どの屋根勾配でも足場は必要だと思っていますが、一般的には5寸勾配までは、足場を掛けないで施工される業者もあるようです。しかし6寸勾配以上になると、どの業者でも足場は必ず掛けています。それだけ、滑る危険性が高まると考えて良いと思います。
■ 今後の修理費用が割高になる
急勾配の屋根修理は、上記のように足場費用が加算されることと、作業できる職人が限られることにより、その高額な人件費もプラスされ、屋根修理費用が割高になる傾向にあります。
4. 緩勾配屋根のメリット・デメリット
3寸勾配以下の傾斜が低い状態を緩勾配(かんこうばい)といいます。ここでは、そのメリットとデメリットについてお話しします。
4-1. メリット
■ 施工価格を抑えられる
屋根面積が少なくて済みますので、施工価格を抑えることができます。また作業がしやすいので、余計な職人の人件費を支払う必要もありません。
■ 風の影響を受けにくい
屋根の頂上部分が低くなるので、強い風が吹いてもその影響を受けにくくなります。
■ 足場が必須でなくなる
急勾配とは反対に緩勾配屋根だと、足場を掛けない業者をよく見掛けます。ちなみに足場費用は、一般住宅でおよそ10万円~30万円ほど掛かるといわれています。足場費用については「足場は本当に必要なのか?その費用(料金)と相場の実情」で詳しくお伝えしています。
4-2. デメリット
■ 耐久性が低くなる
屋根勾配の度合いが低くなると、ホコリなどが付着し、それに雨水が浸み込むことで屋根材の腐食を進行させることになります。
■ 雨漏りになる可能性
雨水の流れが悪いので、雨水経路の複雑化や屋根下地の腐食などにより、どうしても雨漏りしやすくなりがちです。
■ デザイン性が乏しくなる
一般住宅の規模では、地上から見た場合、屋根がほとんど見えないので、実際よりも小さな住宅に見えてしまうことがあります。
■ 断熱効果が期待できない
屋根と天井の間のスペースが狭くなるので、2Fの断熱効果は低くなります。その詳しい仕組みはは「【重要】屋根の断熱は、屋根裏の換気が大きなポイント!」で詳しくお伝えしています。
5. 並勾配のメリット・デメリット
3寸から5寸の一般的な勾配の屋根を、並勾配(なみこうばい)といいます。そのメリットとデメリットについてご説明します。
5-1. 並勾配のメリットとデメリット
6. 屋根材によって最低勾配は決まる
屋根勾配は屋根材によって必要最低勾配が決まっています。それ以下の勾配にすると雨漏りや屋根材の吹き上げなどの問題が発生する可能性が高まりますので、絶対に必要最低勾配だけは守りましょう。
6-1. 金属屋根の場合
必要最低勾配:1/10以上(1寸勾配以上)
6-2. スレート屋根の場合
必要最低勾配:3/10以上(3寸勾配以上)
6-3. 瓦屋根の場合
必要最低勾配:4/10以上(4寸勾配以上)
7. おススメの屋根勾配は「4寸」
屋根勾配の度合いでお悩みでしたら、4寸勾配にされることを強くおススメします。その理由は以下の3つです。
7-1. 雨漏りしにくい勾配だから
4寸勾配であれば、雨水が滞留して雨漏り原因になることは、ほとんどありません。
7-2. 足場が必須でないから
どの屋根勾配でも足場を掛けたほうがいいのですが、4寸勾配であれば、ほとんどの業者は足場なしで対応しています。
7-3. どの屋根材にも適しているから
4寸勾配にしておけば、「金属屋根 → スレート屋根」「瓦屋根 → 金属屋根」のように、将来的にどの屋根材への葺き替えも可能になります。もしも3/10以下(3寸勾配以下)の屋根勾配だったら、屋根材の種類は限られてしまいます。
(例)3寸勾配のスレート屋根から瓦屋根への葺き替えは、事実上できません。
7-4. 雪国の屋根勾配が緩い理由
東北地方や北海道などの豪雪地域の降雪は、想像以上の大きな被害を発生させます。屋根からの落雪で死者が出る事もあるほどです。
昔は、雪が積もるのを防ぐため、急勾配の屋根を作る傾向にありましたが、想像を遥かに超える積雪量の場合、急勾配は意味を成さなくなります。家ごと雪に丸呑みにされてしまうからです。
最近では、落雪防止のため雪国では屋根勾配をわざと緩くしている家が見られます。あまり勾配が急だと、雪降ろしができなくなることも、雪国に緩勾配の屋根が多くなった理由ではないでしょうか。
8. 将来の屋根修理に備えるべきこと
屋根は、これから先、何十年もあなたの住まいを、雨風や雪などの厳しい気象環境から守ってくれる大切なパートナーです。しかし「形ある物は必ず壊れる」ように、屋根もいつかは壊れることを想定する必要があります。
8-1. 火災保険は屋根修理にも対応している
その時に後悔しないように「火災保険」にご加入されることを強くおススメします。実は火災保険は、火災だけでなく、強い風や大量の降雪で損害を受けた場合にも、無料修理を補償してくれる優れた保険です。
これを、火災保険の「風災補償:雪災補償」といいます。
風災補償:雪災補償の詳細は「必見!火災保険を使って屋根修理を無料で行う方法」でお話ししています。知ってて良かったと、必ず喜んでいただけるはずです。
9. まとめ
屋根勾配について詳しくお話しさせていただきましたが、いかがだったでしょうか?業者から奨められるままに家を建てるのではなく、屋根に勾配がある理由を理解していただければ、より納得がいく家づくりができると思います。
あなたが、後悔のない家づくりをされることをお祈りして、ペンを置きます。あなたの素敵なライフスタイル生活を応援しています。
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